こころの大掃除をしよう
2019/01/04 [コラム]
「心の大掃除をしよう」
~どんな記憶も、あなたを守るためのものです~
心の中には『感情を入れるツボ』があります。
悲しい、寂しい、不安、怒り、絶望…色々な感情があります。
そのような感情は、それを経験した『出来事の記憶』と共に、心の深い部分に大切に保存されています。
そして『感情を入れるツボ』の容量は決まっています。
過去に体験した、自分が嫌だと思っていた出来事を考えると、ネガティブな感情がよみがえります。
そのことを考えた時に、悲しい、寂しい、不安、怒り、絶望…などが出てくると、思わず蓋をして
「はい、おしまい」というように、嫌なことを考えないようにして、蓋をします。
しかし、『感情を入れるツボ』の容量は決まっているため、出てこようとしても蓋をしてばかりだと、
いつかは一杯になってしまいます。
そうすると、よくわからないけど涙がでてくる、よくわからないけど辛い気持ちになる、ちょっとしたこと
なのにどーんと落ち込んでしまう、身体に症状が出てくる、などの反応が表れます。
これは自分が見たくないものから、目を背け続けた結果、とうとう『感情を入れるツボ』が一杯になってしまったのです。一杯になると、それが症状として表れてきます。
ちょっとした嫌なことがあると、感情があふれ出てしまいます。
では感情や症状を落ち着かせるためには、どうすればいいのでしょうか?
それは『感情を入れるツボ』に溜まっている、様々な感情・記憶を解放してあげることが必要です。
そもそも、記憶はなぜ保存されるのでしょうか?
人や動物は、『不安』や『恐怖』を感じた経験を、記憶するようにできています。
なぜなら、それを覚えておかないと命の危険に関わるからです。
衝撃的な体験をした時、それを繰り返さないために、心に深く刻みます。
『トラウマ』は2度とそのような経験を繰り返さないために、しっかりとその状況を心に刻むのです。
そして、かつて経験したトラウマと似た状況になった時、すぐに対応できるように緊張状態に入るのです。
しかし、過去に体験した、不安、恐怖、悲しみなど、ネガティブな感情を伴った体験は、あまり思い出したくないものかもしれません。
その記憶・感情が出てくるたびに、「そのことは考えないようにしよう」と記憶・感情を打ち消すと、どうなるでしょうか。
それは開いた『感情を入れるツボ』の蓋を、すぐに閉じ込めるようなものです。
本来、トラウマは感謝されるべき大切な記憶です。
フラッシュバックは、再び同じ危険に合うのを避けるために、深く心に刻んでいるのです。
全ては自分を守るために、覚えているのです。
インパクトがある出来事こそ、しっかりと心に刻むのです。
「トラウマ」となった状況に近づくと、身体は緊張状態になり、警戒態勢に入ります。
なぜなら、あなたを守るためです。
例えばある人が、電車で気持ち悪くなった記憶を、大切に持ち続けていたとします。
その人は警戒しなければいけないから、電車に乗る前にかつて具合いが悪くなったことを思い出します。
脳はリアルにイメージした事と、現実の状況の区別がつきません。電車に乗って具合が悪くなったことの事を考えるだけで、身体は緊張状態になります。そういう事を何度も考えていると、電車に乗るとちょっとしたきっかけで具合が悪くなります。
そして、そのような経験を何度かすると、できるだけその状況を避けるようになります。空いている電車に乗るようになったり、ちょっとでも具合が悪くなったら、電車を降りたりします。
本能的に見れば、これはとても上手く作用していると言えます。ちょっとでも危険な状況、つまり電車に乗ることを避け、自分を守ることに成功しているからです。
こうして苦手なものを避けていれば、危険を回避することができるので、より安全でいることができます。
人前で話すと緊張するから避ける…なども、同様と言えます。
全てのネガティブな考え・感情・行動は、自分を守るための反応です。
そう考えると、ネガティブな感情・記憶は、全て自分を守るための反応なので、もう少し感謝されてもよさそうなものです。
ですが多くの人は「トラウマ」や不安・恐怖を、やっかい者として扱います。
できれば、そんな記憶を消してしまいたい、とさえ思います。
人の心の中には『感情を入れるツボ』のようなものがあります。
「トラウマ」などの恐怖体験などは、記憶がそこに固まったまま、保存されているようなものです。
『感情を入れるツボ』の蓋をちょっとのぞいた時、恐ろしい出来事、感情が溢れ出てきたら、普通の人はどうするでしょうか?
おそらく慌てて、その蓋を閉じるでしょう。
そして、閉じ込められた記憶・感情は強いまま閉じ込められます。
ですから、ちらっと思い出した時、まるで今も体験しているような強い感情と共に、記憶がよみがえるのです。
冷蔵庫にある氷は、常温にしておくと、次第に蒸発して溶けてなくなっていきます。
『感情を入れるツボ』もしっかりと表に出して、温かく見守っていると、次第にその記憶に付随した感情もしっかり薄れていきます。
(ここは前回のテーマである「ネガティブな感情をしっかり感じてあげる」に通じる部分です)
今の季節はひなたぼっこをすると、身体がぽかぽかして心地いいです。
そんなイメージをしていると、身体も何となく温かく感じられます。
そして、自分対して「その記憶をしっかりと覚えていてくれてありがとう。守ってくれてありがとう」と
感謝の気持ちを伝えます。
本当はトラウマの記憶・不安、恐怖にまつわる記憶は、その人を守るためにしていることなので、もっと感謝してあげてもいいはずです。
そうして、そのような記憶・感情に感謝の気持ちを伝えながら見守っていると、思い出した時は嫌な感情が出てきた感じがするけれど、次第に少し冷静に振り返えられるようになります。
過去の出来事にいい、悪い、と意味付けしていたものが、だんだん現実をそのまま受け止められるようになってきます。
本当は、出来事にいい、悪いは存在せず、その人が意味付けしたものなのです。
どんな感情も、本能的にはその人が生存するために、引き起こしているものなのです。
そう考えると、どんな感情であっても、本来は1つも無駄なものはありません。恐怖、悲しみ、孤独、絶望さえ、その人が求めるものがあるからこそ、生じているのです。
どんな感情も、あなたに色々な事を伝えてくれます。
記憶・感情に対して「教えてくれてありがとう。守ってくれてありがとう」…そんな風にどんな記憶もあってもいい、と自分が許可を出した時、凍っていた様々な感情が、溶けて流れ出していくのです。その後には、心がすっきりとしていきます。
集団でやった時には「思い出した時に少し嫌な感じがするけど、やってみたら少しスッキリした」という人がいました。思い出して嫌な感じがするのは、少しずつそれが表に出てきたからです。それでも温かく見守っていれば、いろいろなものが解放されていきます。
一方で、「思い出そうとすると、それを無理に抑えようとする感じがする」という人もいました。それでもいいと思います。今はまだそのタイミングではないのかもしれないですし、そのように解放する、という仕組みを学び始めたところなのかもしれません。
どんなことも、自分のために行っているので、それでも大丈夫です。
どんな出来事、どんな感情もあっていい。
そんな姿勢でいると、過去の色々な体験を受け入れ、許せるようになってきます。
そして、自分の存在を「ああ、最初から今の自分でよかったんだな」と気づかれることでしょう。