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患者の気持ち

集団および個別による認知行動療法

'認知'とはなにか?

認知行動療法の'認知'とは、自分自身や世の中に対する考え方のことを指します。例えば、以下のように考えてしまうことはありませんか?

~うつのときに起こしがちな'認知の歪み'~

「一般化をしすぎてしまう」
1回だけの嫌な出来事をきっかけに、『自分はいつも××だ』とネガティブ思考に陥る。
「自分への関連付けをしてしまう」
よくないことが起きたとき、本来自分には関係ないことまで自分の責任と判断してしまう。
例:会社の同僚が不機嫌そうにしていると「きっと自分は嫌われているのだ」と感じる。
「0か100かの二者択一思考」
ものごとを全て白か黒かで捉える。完全主義。
「'~べき'思考」
「自分は○○するべきだ」「○○しなければならない」と決めつけてしまう。

このような思考のくせに気づき、修正することにより、よりよく日常生活を送れたり、仕事や学業などが円滑になるよう、サポートしていく、ストレスにうまく対処できるようにすることを目標とする治療といえます。

'行動'とはなにか?

認知行動療法では、考え方(認知)を取り扱うだけではなく、状況や環境とのやりとり(=行動)から「身体が何を学習してしまったのか」を考え、どう対処すればよりよき行動ができるかを考えます。

認知行動療法はうつ病、強迫性障害、不眠症、ストレス性疾患などにて行っています。1:1のカウンセリング、および集団での認知行動療法を行っています



<うつパニック不安の認知行動療法の一技法>

うつ・パニック・不安の認知行動療法のひとつの技法を紹介しましょう。
たとえばうつ病のときはどうしてもネガティブにものごとをとらえがちで、それにより悲観的思考、行動に陥りがちです。

認知行動療法では「もう一人の自分」をつくり、その「もうひとりの自分」からいろんな前向きな考え方などを導き出していくわけです。

認知行動療法のひとつの技法である「認知再構成法」について示したいと思います。

以下はひとつの例です。
新しい考えかたがうかんできて、それによりゆううつな気分も楽になるかもしれません。

認知再構成法の一例
新しい視点を見つけよう(認知再構成法)
出来事
(いつ、どこで、誰と、どんなことが?)
2月26日、午後3時。友達の田中さんと一緒に買い物をしていた。
田中さんが私に「買いたい服があるんだけど、お金貸してくれない」「あなたはお金たくさん 持ってるんでしょう」と言った。私は「まあ…。いくら必要なの」と答え、5千円を貸した。
考え(一番それを感じると辛くなるものに○をつけましょう) 感情
・私だってそんなにお金を持っている訳じゃない。
・お金を貸すのを断ったら嫌われるだろう。
・もしかして、私がお金あまり持ってないのに、わざといったのかもしれない。
・お金がないなら買うのを我慢すればいいのに。
・私だって買いたいものがある。でも、友達が困っているならしかたがないかな。
・友達が困っているなら助けないといけない。
■(相手がいる場合)あなたは本当はどうして欲しかったのでしょう?
こちらの意見をもっと聞いて欲しかった。こちらの気持ちも気遣って欲しい。
怒り70%
不安30%
新しい考え(○をつけた考えを中心に検討しましょう) 感情
■その考えが客観的に正しいと思える理由
前に「その本貸して」と言われた時、「まだ読んでる途中だから」と答えたら、
しばらく会話がなくなった。
■その考えが客観的に違うと思える理由
今まで何度も一緒に出かけている。
普通に話している時は、山田さんは楽しそうにしている。
■親しい人が同じ考えて悩んでいたら、なんと声をかけてあげる?(やさしい態度で)
お金がないなら、無理して貸さなくていいんじゃない。
別にそれで相手の機嫌が悪くなっても、あなたのせいじゃないよ。
■他の人だったら(家族、友人、職場の人、尊敬する人)、どうするだろう?
お金の貸し借りはトラブルの原因になるので断る。
「ごめん、今お金あまり持ってないんだ」と言う。
■他の人の立場に立ってメッセージをもらう。(その人の場所に入り、メッセージをもらう)
(メッセージの相手: 母親 )
あなたの困っている人を助けたい、という気持ちはいいんだけど、何も自分が
無理することはないのよ。もしあなたが嫌なら断っていいのよ。
(メッセージの相手: 佐藤さん )
断って機嫌が悪くなるのなら、山田さんの方に原因があるよ。
大丈夫。あなたは悪くないよ。
怒り30%
不安10%
適応的思考(新しい考えをまとめる)、(新しい考えを踏まえて)やってみること
お金を貸すのを断ったからと言って、それで関係が切れる訳じゃない。
むしろ、自分が無理して相手に合わせる方が、もやもやしてよくない。
普段は仲がいいから、今度もし嫌だったら断ってみよう。
その悩みから抜け出した自分をイメージしてみよう(自分の表情、声、身体の感覚、気分、どんな考え)
あがり症(社交不安障害)

あがり症(社交不安障害)には特定の限られた状況や場面にだけ不安や緊張を生じる非全般性のもの。
そして、対人接触する場面のほぼすべてで不安や緊張を生じるものを全般性の社交不安障害といいます。

*社交不安障害の治療にも認知行動療法が有効とされています。

~社交不安障害の例~
1 人前で話す場面、自己紹介の場面、発表する場面などで緊張不安を生じる
2 電話が怖くて取れない、電話だと話がうまくできずに不安緊張を生じる
3 外食することができない、人からみられているといった場面では食事ができない
4 ひとにみられている場面では緊張不安が強くなり字がかけない、震えてしまう

などがあります。

●あがり症(社交不安障害)の治療

*認知行動療法などの心理療法
認知行動療法ではものごとの考え方のクセ、思い込み、(認知のゆがみ)を是正し、
行動の変容をもたらし緊張や不安をきす場面状況に上手に対応できるようにトレーニングしていきます。
あがり症(社交不安障害)の根本となる部分に働きかけ、是正していきます

*薬物療法
お薬を用いて不安や緊張の軽減をもたらし、苦手な場面にチャレンジしていくことを促します。
自信をつけていくこともできるようになります。
  
薬物療法と認知行動療法を中心とした心理療法の併用にて病状の改善をはかっていきます。
あがり症(社交不安障害)は決して「きのもちよう」ではなく、病気として治療を要します。