不安症状(不安症)の認知行動療法 ~回避行動と暴露療法~
1.回避や安全行動の悪循環(不安が維持されるメカニズム)
不安症の人は、不安な状況を回避したり、安全行動をすることによって対処しようとしています。回避とは、不安を経験しないようにするため、不安な状況を意図的に避けることです。この回避と少しにていますが、安全行動とは、不安を予防するための安全策をはること、不安をコントロールしようとすること、一時しのぎの解決策をおこなうことです。
回避 | 安全行動 | |
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社交不安 | 発表を避ける 人前にでない |
緊張しているのがバレないよう隠す行動
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パニック症 | 電車に乗らない 床屋にいかない 一人で外出しない |
パニック発作が起こらないようにするための安全策
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強迫症 | 公衆トイレに行かない 外出しない |
強迫行為
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上記のような回避や安全行動をおこなうと、一時的に安心できることがあるので、不安症の患者さんからすれば、回避や安全行動をすることが有効に思えてしまうことがあります。例えば、「回避や安全行動をしたから、最悪な事態をまぬがれた。もし回避や安全行動をしていなかったら、最悪な事態が起きていたに違いない」と考えてしまいます。しかし、これが落とし穴なのです。なぜなら、回避や安全行動をしなくても、「実際は何とかなる」、「最悪なことはおきない」という経験をすることができなくなり、長期的にみると、不安を避けようとする回避や安全行動がやめられず、不安が克服できなくなります。その結果、症状が維持されてしまうのです。
2.曝露療法
不安症の人は、不安な場面を過剰に避けてしまいがちです。「避ける」という対処をすれば、その場は何とかしのげて一安心です。しかし「避ける」という対処を続けてしまうと、その時は安心できるかもしれませんが、長い目でみると克服する機会が得られなくなり、苦手意識がなくならず不安が維持されてしまいます。不安という感情は大よそ20~30分でピークになるが、その後、不安はだんだんと自然に小さくなる。このような不安に慣れていく現象を「馴化(じゅんか)」といいます。曝露療法は、この馴化を応用した治療法です。
曝露療法では、治療者と患者さんが協働し、信頼関係を築きながら、不安な場面に挑戦する練習していきます。いきなり難しい課題にチャレンジするのではなく、「がんばれば何とかできるだろう」というレベルの課題から段階的にチャレンジする。例えるのなら、高いハシゴを一段ずつ上る練習をするようにやっていきます。
練習することで「最悪なことは起らない」という発見もあります。また、不安な状況を避けずとも、「案外大丈夫だった」「最悪なことは起こらなかった」という新たな発見をすることもあるでしょう。例えば強迫症でいうと、「過剰な手洗いや確認などの強迫行為をしなくても、結局何もトラブルがおこらなかった」という体験を、曝露療法をしながらできるとよいでしょう。