主な対象疾患
医療現場では、うつ病はありふれた病気として取り扱われています。
一方で患者さんのうつ病に対する理解は未だ十分とは言えず、心療内科や精神科を受診することをためらったり、性格の問題であると考えてしまう人も少なくありません。
うつ病は生活や環境の変化が過度なプレッシャーやストレスとなって、それをきっかけに起こることがあります。
原因となる出来事は、身近な人の死やリストラなどの悲しい出来事だけではなく、結婚や出産といったうれしい出来事でもうつ病を引き起こすことがあります。
医学の進歩とともに、うつ病は脳内の神経伝達物質がうまく働かない状態になっていることがわかってきており、治療により神経伝達物質の働きを改善する必要があると考えられています。
うつ病の治療は十分な休養と抗うつ薬という数種類の薬を用いて、脳内神経伝達物質のバランスの乱れを調整することが基本になります。
最初のパニック発作は、時間は短くても非常につらいものです。
そこで「また、発作がおきたらどうしよう」という不安(予期不安)を抱きます。
この不安が二度目以降の発作に大きく関わってきます。
予期不安があると、パニック発作を恐れると同時に、発作時に誰も助けてくれない状況を避けるようになり、ひどくなると乗り物に乗れなくなったり、外出できなくなったりします。
強迫症状は強迫観念と強迫行為に分かれます。
強迫観念とは、自分でもばかばかしいと分かっていながらくり返し、浮かんでくる考えです。
一方、強迫行為はばかばかしいと分かっているのに、何度もくり返してしまう行為です。
強迫行為は強迫観念に基づいており、両者を切り離すことはできません。
症状には波があり、良くなったり悪くなったりをくり返しながら、全体的には良い方向に向かっていきます。
環境の変化やライフイベントによっても症状は大きく変化するものですが、一つ一つ波を乗り越えていくことで治療は進みます。
したがって、症状が少し悪くなったからといって、焦って通院先を変えたりすることはかえって逆効果です。
また、薬の服用についても、安易に自己判断しないようにしましょう。
社会不安障害は、社会生活の中で不安や恐怖を感じている特定の状況になると、心身に症状があらわれ、それらの症状を人に気づかれないかと不安になり、自信がもてず、このような症状を惹起する行動や状況を避けるようになる病気で、この回避行動により社会生活に支障をきたすようになります。
社会不安障害の原因は、主として脳内のセロトニンなどの機能異常と考えられており、それらを調整する薬物治療がなされます。
また、心理療法も効果が期待できます。
色々なストレス反応(心理反応、行動反応、身体反応)が生じますが、これらは外界からの刺激に適応するための必要な反応です。
ところが、ストレスが過剰な時、個人がストレスに対して脆弱である時に、このバランスが崩れて様々な障害をきたすようになります。
現在のところ、適応障害に対する標準的な治療法は確立されておりませんが、うつ病などの治療法が役に立つと言われています。
また、その場合は精神療法が中心となり、原因となっている心理社会的ストレス因子を軽減することが、最も不可欠な要素とされております。
併せて、適応しやすい環境を整えることや、場合によってはしばらくの間、休職、休職などの休養をとり、心的エネルギーを回復させることも必要です。
摂食障害に効果的な治療法は確立されておりませんので、心理療法や行動療法を中心として治療を行うとともに、時期に応じて、痩せや過食嘔吐に対する身体へのダメージに対し、身体医学療法などを使うのも、重要な治療になります。
精神科・心療内科である当院では、下痢止めや腸の痙攣を止める薬など、対処療法的な投薬だけでなく、必要におうじて抗不安薬や抗うつ薬を処方することで、精神的な苦痛を和らげる方法をご一緒に考えさせて頂きます。
過敏性腸症候群は、特に腸が敏感になっていますから、ちょっとしたストレスにも反応し、不安も症状も増幅していきます。
実際に、何年も思い悩んでいた症状が、精神的な薬の服用で、治ってしまうケースも見られます。
身体表現性障害は、身体感覚に敏感で悲観的にとらえやすい繊細な方がなりやすいと言われています。
また、心身の過労(例えば親の介護疲れや過度の残業など)や、身辺の環境変化(例えば職場異動や引越、近親者との死別など)が、 ストレスの要因になっていることを認識しにくく、言語化できない方の場合に身体症状として表れることがあるとも言われています。
身体表現性障害の治療は、柔軟に支持的に助言するような精神療法や薬物療法、職場や家庭などの環境調整が考えられており、 薬物療法以外の基本的な対応を学ぶことも重要だと言われています。
精神療法では、その人がどんな問題を抱えているのか、不安感や抑うつ感に苦しんでいることにも留意しながら、 丁寧に身体的健康に関する気がかりをうかがい、ストレスの原因となっている環境調整や、ストレス対処法を身につけていくことを目指します。
また、精神疾患を合併している場合には、薬物療法(抗不安薬や睡眠薬など)が効果的だと言われています。
不眠症の原因としては、「環境要因」「生理的要因」「心理的な問題」「器質的疾患」「精神疾患」など、さまざまな原因がありますが、 最近になって不眠症を訴える方が多くなっている理由は、現代の社会にあるようです。
現代社会は、ストレス社会ともいわれるように、子供から大人まで、家庭や学校、職場とあらゆる環境にストレスが存在しています。
これらのストレスは私たちの心身に影響を与え、このため不眠を訴える方が多くなっていると考えられます。
症状としては、疲労感・ほてり・しびれ・息切れ・動悸・めまい・頭重・頭痛・眠れない・寝汗・食欲不振・胃痛などがあり、いわゆる不定愁訴として症状化する事が多くみられます。
自律神経失調症の治療は、抗不安薬が有効である事が多く、加えてストレスの原因となっている背景を知ることが鍵となります。
その結果次第では、環境調整が必要な場合もあります。又、抗うつ薬が意外に症状を軽くしてくれる場合も多くございます。
認知症は恥ずかしい、周囲に隠しておきたい病と考えている方が多くいますが、れっきとした病気です。
早期の診断・治療により進行を遅らせることもできます。
認知症は、アルツハイマー型認知症と血管型認知症と大きく二つに分けられます。アルツハイマー型は65歳以上の女性に多く、原因は脳の変性であり、ゆっくり進行します(若年型は比較的速く進行します)。
自覚症状はないことが多く、抗認知症薬等で治療を行います。
血管型は50歳代から見られ、男性に多く、原因は脳血管の硬化であり、血圧を下げる薬や血栓ができるのを抑える薬が主となります。
症状としては、初期には幻聴(実際にない声や音が聞こえる)、被害妄想(悪口を言われる、見張られている等実際にないことをそう思い込む)、思考の混乱(物事を正確に理解・判断できない)、感情の不安定さが見られます。
回復期には意欲低下、倦怠感、過眠、甘えがみられ、慢性期には活動性の低下、周囲への無関心、注意力低下がみられます。