あがり症・社交不安障害とその治療
あがり症・社交不安障害とは?
社交不安症とは、人から注目されるような場面
(人前で話す、 電話で話す、会話を交わす)や、恥ずかしい思いをするかもしれないという状況に対して強い不安を感じる疾患です。
人から注目されるような場面や状況があまりにも苦痛で、 人前を避けるようになります。
家に閉じこもった生活を送るようになり、 日常生活に支障が出てきます。
驚きなのでは、その発症率です。 生涯で社交不安を発症する人の割合は13%です。
発症年齢が若く、平均 13 歳です。
あがり症・社交不安障害と合併疾患
併存疾患を有する場合が多く、うつ病、 その他の不安障害、アルコール依存などを併発します。 自然に改善していくことは稀で(自然寛解率 30~40%)、慢性の経過をたどることが多いです。
あがり症・社交不安障害のタイプとは?
1) スピーチ恐怖
人前での発表で異常なほど緊張してしまうタイプです。
2) 会食恐怖
飲み会など、人前で会食するような場面で、 過度な緊張をしてしまうタイプです。
「 食べている姿がみっともない、他人にとって深いだろう」 と考えたりする人もいます。嘔吐恐怖を伴うこともあります。
3) 電話恐怖
職場などで電話にでることに過度な不安・緊張を感じます。 電話に出るのを意図的に回避したりします。「 自分の電話している話声が、 周囲に不快な印象を与えているのでは?」 と考えてしまうことがあります。
4) 視線恐怖
「他人から見られている」と強く感じ、 他人からの視線を強く意識してしまうことがあります。 実際には見られていなくても「みられている」と感じてしまい、 仕事に集中できなくなります。 他人に見られていないか確認するため、 他人の目線を横目で確認してしまうこともあります。また、「 自分が他人に不快な視線を送っている」 ということを不安に感じる人もいます。
5)赤面恐怖
「大勢の前で赤面してしまっているのでは?」 ということを不安に感じるタイプです。
6)排尿恐怖
「トイレが我慢できないのでは?」 ということを不安に感じるタイプです。
7)発汗恐怖
脇から出る汗や、自分の汗が、他人に注目され、 相手に不快感を与えてしまうのではないかという不安が強いタイプ です。
8)書痙
字を書くことに、過度な不安や緊張が起こるタイプです。
9)振戦恐怖
手の振るえなどを過度に恐れるタイプです。
10)腹鳴恐怖
「お腹が鳴ってしまい、皆に馬鹿にされる」「 お腹がなってしまい、皆の前で恥をかく」といった考えがうかび、 不安になるタイプです。あがり症・社交不安障害と予期不安
社交不安の人には「予期不安」というものがあります。
予期不安とは、未来に発表などの苦手な状況があると、「 その状況で大恥をかいてしまうのでは?」 繰り返し心配してしまうことです。
発表で頭が真っ白になってしまうのでは?
みなの前で赤面し、あがってしまったらどうしよう
飲会で、皆に変な人だと思われるのでは?
上記のような不安が浮かび、何かイベントが起こる何日も前から、 心配しつづけてしまいます。
あがり症・社交不安障害を高めてしまう考え方1
(悪化させる考え方とは?)
社交不安を高める考え方を紹介します。その1つが「 高い基準設定」をするような考え方です。例えば、 以下のような考え方です。
上手い発表をせねばならない
失敗やミスしてはならない
緊張しているのを見破られてはならない
上記のような「○○ではならない」「XXXであるべきだ」 といった思考は、不安や緊張を高めてしまう考え方です。
あがり症・社交不安障害を高めてしまう考え方2
(悪化させる考え方とは?)
社交不安を高める考え方を紹介します。その1つが「 失敗した場合のリスクの拡大解釈」をするような考え方です。 例えば、以下のような考え方です。
失敗した場合のリスク拡大解釈
赤面したら変な人/ダメな人だと思われる
つまらない話をしたら嫌われる、迷惑になる
失敗したら一生の笑いものだ、噂される
上記のような思考は、不安や緊張を高めてしまう考え方です。 これらの思考は、認知行動療法で修正していくことができます。
あがり症・社交不安障害と過度な自己意識
社交不安が高まる要因のひとつとして、 過度な自己意識というのがあります。
自己意識には2種類のタイプがあります。
① 私的自己意識
他者からは直接観察されない自己の側面(心のなか) に注意を向ける自己意識です。
自らの思考、感情、身体的変化(動悸) に注意を向けてしまいます。
② 公的自己意識
他者から観察可能な自己の側面に注意を向ける自己意識です
自分の外見(赤面、手の震え、汗、声の振るえ )に注目してしまいます
他人から見た「自分」をネガティブにイメージしてしまいます。
あがり症・社交不安障害と安全行動
安全行動とは、社交不安の人が、 自らの不安を下げるために行う行動パターンです。
不安をコントロールしようとする試みや、 緊張しているのがバレないように隠す行動です。安全行動には、 例えば以下のようなものがあります。
・発表が早く終わるよう早口でしゃべる
・食べる姿をみられたくないから、食べない
・視線を避けて、下を向く
・人や物の影に隠れる
・過度な原稿やカンペを用意して話す
・余裕を持っているかのように振るまう
このような社交不安の安全行動は、一時的に不安を和らげますが、 安全行動が止められなくなり、 長期的には社交不安を長引かせてしまします。
あがり症・社交不安障害における安全行動は症状を悪化させる
① 自己意識が高まってしまう
「安全行動をしている自分は、 きっとおかしな人だと思われている!」と想像してしまい、 その考えのせいで不安がさらに高まってしまいます。
② 不安反応が維持・悪化されてしまう
緊張していることを隠しながら発表するのは大変です。 やることが増えてしまうので、 動悸や発汗などの身体反応がますます悪化してしまいます。
認知行動療法では、 このような悪循環となっている安全行動を少しずつ止めていく練習 をしていきます。
*あがり症・社交不安障害における認知行動療法およびその他の心理療法などを千葉駅前心療内科ではおこなっています。カウンセリングの中であがり症・社交不安障害の考え方を学んでいく心理教育を行っています。